臨床検査技師あるある【生理検査編】
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血液検査や心電図など、病気の診断や治療に必要なさまざまな検査を行う臨床検査技師。以前の記事で、そんな臨床検査技師のあるあるを挙げてみたのですが…。
今回は臨床検査技師の仕事の中でも、心電図やエコー検査など患者さんに接して検査を行う「生理検査」についてのあるあるをまとめてみました。
今回も専門用語などには解説をつけてありますので、医療従事者以外のかたもどうぞお読みください!
心電図の記録をスタートした瞬間に不整脈が止まる
心電図の電極を患者さんにつけているときに心電計の画面を見て「あ、不整脈出てる」と思っても、いざ記録を始めたとたんに不整脈が出なくなることありませんか?
記録が終わったあとに少し待ってみても不整脈が出ず、「たまたま出ただけかな?」と思って電極を外しはじめるとまた出てくるんですよね。
逆に電極をつけているときは静かに寝ていた患者さんが、記録をスタートしたとたんに動き出して筋電図が入ってしまうことも。
肺機能検査のときに松岡修造になる
呼吸の状態や肺の容量などを調べる肺機能検査は、心電図などと違って患者さんになるべく限界までがんばって呼吸してもらわないと、正確な結果が出せません。
そのため検査する側も、
「吸って吸って吸って、もっと吸ってもっとがんばって!今度は吐いて吐いて、まだまだ!まだ吐いて!まだ吐ける!もう一息!」
と気合を入れて声かけをしています。
さっきまで普通に検査の説明をしていた技師がいきなり松岡修造さんみたいになるので、患者さんにびっくりされることも。
10人くらい連続で検査すると、私のほうが息も絶え絶えです…。
脳波検査の睡眠待ちで自分が寝る
異常な脳波をキャッチするために、脳波検査では患者さんに眠ってもらい、睡眠時の脳波を記録することもあります。
ですが検査で緊張しているのか(頭に電極をたくさんつけられますからね)、なかなか眠れない患者さんも多いです。
患者さんが寝るのを待っているうちに、自分のほうがウトウト…。
特に午後の脳波は自分の睡魔との戦いです。
明らかに100キロ超えてるだろ…って患者さんがエコー室に入ってきたら心が折れる
超音波(エコー)検査は超音波をからだにあてて、はね返ってきた超音波を画像にする検査ですから、体格がよすぎると超音波が届かず、エコー検査をやってもよく見えません。
特に心エコーは患者さんの体を抱え込むようにして検査するので、100キロ超えの患者さんを検査するときは手が届かず、ベッドに乗り上げてけっこう無理な体制で検査することもしばしば。
心エコーは腰をやられます。
しかもそこまでがんばっても、画面にはモヤの中に何か動くものがかろうじて見える程度。これじゃEFも測れない…。
※EF(左室駆出率)…心臓のはたらきをみる指標のひとつ。
冬は患者さんがマトリョーシカになる
冬場、特にお年寄りのかたはかなり厚着をしているので、心電図のときに脱いでもらうのが大変です。
ダウン→トレーナー→長袖シャツ→薄手の長袖→半袖→腹巻き→下着…。まるでマトリョーシカみたいに、何枚脱いでも肌が出てこない…。
心電図の検査時間より、脱いだり着たりする時間のほうが圧倒的にかかります。
緊急ポータブル検査の患者さんが元気そう
ベッドから動けない患者さんの場合、心電図やエコー検査などは、ベッドサイドに機器を持っていって検査することもあります(ポータブル検査といいます)。
病棟から「緊急でポータブルの心電図お願いします」と連絡があって、急変か?心筋梗塞か?と急いで病室に行くと患者さんがいない。
「あれ?」と思って患者さんを探すと、自分で歩いてトイレに行っていたり、トイレから戻ってきても普通に受け答えできて元気そうだったり。
病棟から呼ばれたから行ったのに、「今さっきリハビリに行きました」と言われたこともあります。
緊急ポータブルの意味とは…。
ポータブルから帰ってきたらまたポータブル
ポータブルの心電図に呼ばれて病棟に行き、検査が終わって検査室に戻ってきたらまたポータブルに呼ばれる。しかも同じ病棟から(そして行くと患者さんがいない)。
私が働く病院では、救急外来の心電図も臨床検査技師が検査します。1人で当直しているときに救急外来に心電図に呼ばれて、検査が終わって検査室に戻ってきた直後にまた救急外来へ。
そうやって検査室と救急外来を往復していると、ドクターや看護師さんから「血液検査の結果まだ出ないんですか?」と問い合わせが。
えぇ、当直の臨床検査技師は私だけですし、その私がさっきから検査室と救急外来の往復しかできてませんからね…。
男性技師は肩身が狭い
心電図やエコー検査で患者さんに胸やおなかを出してもらう都合上、どうしても男性技師はやりづらい場面が出てきます。
特にエコーは大変ですよね。乳腺や心臓、腹部は言わずもがな、頸動脈や甲状腺も首もとに技師の手がくるので患者さんの胸に手が当たりやすいですし、下肢エコーも足の付け根から検査しますし、おまけに検査室でそこそこの時間2人だけになりますし。
患者さん側も「男性に検査されるのはちょっと…」と思うかたもいると思いますが、男性技師も誤解をまねかないように注意しています。
「これは無茶だよ…」という検査依頼がある
100キロを軽く超えている患者さんの心臓やおなかのエコー検査や(体格がよすぎると超音波が届かないので臓器が見えない)
まだ3歳にもなっていないようなお子さんの聴力検査とか(「音が聞こえたらボタンを押してね」がわからない、集中力が持たない)
皮膚科や整形外科で足が包帯でぐるぐる巻きになっている患者さんの下肢エコーとか(この包帯は外してもいいんですか?)
認知症の患者さんのホルター心電図とか(機器を途中で外してしまったり破損したりしました)
「検査を依頼する前に「これは無理かな」ってわかるだろ!」と言いたくなるような検査依頼がちょいちょいあります。
※下肢エコー…足の血管につまりがないかなどをエコーで調べる検査。
※ホルター心電図…心電図を記録する小型の機器を24時間装着し、日常生活での心電図を調べる検査。
「結果はどうですか?」と聞かれると困る
臨床検査技師は診断ができません。診断ができるのは医師だけです。検査をしていると「この病気だな」とわかることはありますが、それを患者さんに言うことはNGです。
それに心電図では異常がなかったけど、心エコーで異常が見つかるなんてこともありますからね。そこで心電図検査のときに「大丈夫ですよー」と言ってしまうと、あとで「あの人は大丈夫って言ってたのに!」というトラブルの元にもなりかねません。
そのため患者さんから「(検査の結果は)どうですか?」とか「どこか悪いところありましたか?」と聞かれると困ります。
患者さんからすれば、「今まさに検査しているんだからどんな感じかわかるだろう」と思うのは当然なんですが…こちらにも言えない事情があるわけです。
「診察のときに主治医から検査結果の説明もありますからね」と答えることが多いですが、そう言うと「ここで答えられないくらい悪いの…?」と深刻に受け止めてしまう患者さんもいらっしゃるので、なかなか難しいです…。
誰かこの質問への上手な返しかたを教えてください…。
おわりに
臨床検査技師あるある・生理検査編でした。
私はコミュ障なのに生理検査に配属されてしまいましたが、毎日いろんな患者さんと接しているうちに、多少はコミュ障が改善したような…気がします。