なぜ採血のやり直しが必要になるの?再採血の原因とは

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採血のやり直しが必要になる理由

病院で採血をして、あとは検査結果が出たら診察だと思って待っていたら、「さっきの採血がちょっとダメだったので、もう一度採血させてください」と言われてしまった…。こんな経験があるかたはいませんか?

採血は痛みを伴いますから、何度もやりたいとは思いませんよね。「もう一度採血が必要」と言われたらがっくりきてしまいます。

再採血になるのは検査する側としても申し訳ないのですが、もう一度採血が必要になるのには理由がいくつかあります。その理由をお話しします。

血液が凝固している

血液凝固

血液は出血したときに止血できるように、血管の外に出ると固まる性質があります。この血液が固まることを凝固といいます。

しかし血液に含まれる細胞の数や形、血液の固まりやすさなどを調べる場合、血液が固まってしまうと正確な検査ができません。そのためこれらの検査には、血液が固まらないようにする薬剤(抗凝固剤)が入っている採血管を使っています。

ですが血管が見えづらくて採血に時間がかかったり、採血後に血液と抗凝固剤をしっかり混ぜなかったりすると、抗凝固剤が入った採血管に採血しても、血液が固まってしまうことがあります。

採血をしたときに、看護師さんや臨床検査技師が採血管を振っているのを見たことがあるかたもいると思います。あれは中の血液と抗凝固剤を混ぜているんですよ。

溶血している

溶血

赤血球は血液中に含まれる細胞で、からだ中に酸素を運ぶはたらきがあります。この赤血球がなんらかの原因で壊れてしまうことを溶血といいます。

血液を遠心分離機にかけると、下に沈む赤血球や白血球などの細胞成分と、液体成分の上澄みにわかれます。上澄みは、血液を凝固させずに遠心した場合は血漿(けっしょう)、血液を凝固させてから遠心した場合は血清と呼ばれます。

血漿や血清は本来なら薄い黄色をしていますが、溶血している場合は、赤血球に含まれる赤い色素をもつヘモグロビンが出てきてしまうので赤くなります。

血液の病気で溶血してしまうこともありますが、溶血の原因の多くは、

  • 消毒のアルコールが乾く前に針を刺したため、アルコールで赤血球が壊れた。
  • 注射器で採血した血液を採血管にうつすときに、勢いよく入れたため衝撃で壊れた。
  • 細い針で採血した。
  • 血管が見えづらいなどの理由で採血に時間がかかった。

といった採血時の問題であることが多いです。

溶血すると、

  • カリウムやLD、AST、鉄などは赤血球に多く含まれており、溶血で赤血球が壊れると血液中に出てきてしまうため、本当の数値より高くなる。
  • ヘモグロビンの赤い色素が測定に影響を与えるため、ビリルビンなどは高く、ALPなどは低くなる。
  • BNPなどは、溶血により赤血球から出たタンパク質を分解する酵素で分解されるため低くなる。

というように、溶血は検査結果に影響を与えてしまうため、再採血が必要になります。

採血量不足

採血量不足

採血管にはさまざまな種類があり、それぞれ入れる血液の量が決まっています。

検査項目の多くは、規定の量より多少多かったり少なかったりするくらいならあまり問題はありません。

ですが血液をサラサラにするお薬の効き目や、血管の中に血のかたまり(血栓)ができていないかなどを調べる検査(凝固検査)では、血液が規定の量より多すぎても少なすぎても検査結果に影響が出てしまいます。

凝固検査では血液の固まりやすさを測定するため、採血管の中に入っている抗凝固剤のはたらきを計算に入れる必要があります。そのため血液と抗凝固剤であるクエン酸ナトリウムを9:1の割合で混ぜるという決まりになっており、採血管に決められた量の血液を採血すれば、この割合で混ぜられるようになっています。

つまり採血量が規定量より少ないと、血液に対してクエン酸ナトリウムが多くなってしまいますし、採血量が規定量より多いと、血液に対してクエン酸ナトリウムが少なくなってしまいます。すると正確な結果が出なくなってしまうわけです。

追加検査が必要になった

追加検査

採血された血液は検査部門に運ばれ、われわれ臨床検査技師が検査を行います。臨床検査技師が報告した検査結果を医師がチェックして、患者さんの治療方針を考えます。

医師が検査結果をチェックしたとき、「〇〇の数値がこのくらいなら、✕✕の数値も知りたい」というように、検査結果をうけて追加でほかの検査が必要になることがあります。

検査項目によって、血液を固まらせずに検査するものや、固まってから検査するもの、遠心分離機で遠心するもの、遠心すると検査できないものなどさまざまで、それぞれ適した採血管を使わなくてはなりません。

そのためすでに採血してあるもので検査できる場合もありますが、再度採血が必要になることもあります。

おわりに

再採血が必要になる理由についてお話ししました。

再採血は採血するスタッフ側の工夫で減らすことができますが、血管が見えづらくて採血しづらいと、どうしても凝固や溶血を起こしてしまうこともあります。

再度の採血になるのは申し訳ないのですが、正確な検査結果を出すためにも、ご協力いただけると助かります。

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