便潜血検査でわかること 検査結果の見方を解説
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会社や自治体の検診、人間ドックなどで便検査が行われますよね。
血液検査や尿検査と比べてあまりなじみがない検査なので、
「便検査って何がわかるの?」
「便はどうやってとればいいの?」
と思うかたもいると思います。
今回は便検査について、便のとりかたや検査結果の見方を解説します。
便検査でわかること
便検査にはおもに、
「便の中に細菌や寄生虫がいないかを調べる検査」と
「便に血が混じっていないかを調べる検査」
の2種類があります。
便の中の細菌や寄生虫を調べる検査は、食中毒などの原因を調べたり、寄生虫による病気が疑われたりするときに行なわれる検査です。また食中毒を防ぐために、飲食店などで働く人に対しても行われています。
以前は学校でも寄生虫を調べるための便検査がありました。
学校に便を持っていった記憶がある人もいると思います。
ですが衛生環境がよくなり、からだの中に寄生虫がいる人が激減したため、現在では学校の検便は廃止されています。
現在会社や自治体の検診、人間ドックなどでおもに行われているのは、便に血が混じっていないかを調べる「便潜血検査」というものです。
この記事ではこの便潜血検査についてお話しします。
便に血が混じるとは?
健康な人であれば、便に血が混じることはありません。ところが大腸にポリープやがんがあると、そこから出血するため便に血が混じります。
つまり便に血が混じっているということは、腸になんらかの異常が起きている可能性があります。
出血量が多ければ自分で便を見て出血に気づくこともあるでしょうが、少量の出血は肉眼ではわかりません。便潜血検査では肉眼ではわからないごく少量の血液も検出することができます。
大腸がんは日本において、がんの中で最も患者数が多く、また男女ともに死亡率も高いがんです。しかし早期に治療すれば高い確率で治すことができるがんでもあるため、便潜血検査による早期発見が大切になります。
便の採取方法
便潜血検査では、自宅で便を採取し、病院や職場などに提出します。
事前に上の写真のような、便の採取キットを渡されます。便を採取するためのスティックと、スティックを入れて保存できる容器のセットになっているものが多いです。
採便キットのスティックには溝があるので、その溝が埋まるくらい便を採取してください。
便の一部だけ採取したのでは、血液を検出できないおそれがあります。全体からまんべんなく採取するようにしましょう。
トイレの水や洗浄液が便につくと、血液が流れ落ちてしまうなどして正確な結果が出ないことがあります。また保存容器の中に入っている液体は便を保存しておくためのものですので、捨てないようにしてください。
詳しくは採取キットの説明書をよく読み、不明な点は病院などに連絡しましょう。
便を採取するときのよくある質問について、こちらの記事にまとめたのでぜひご覧ください。
便を2回採取する理由
現在行われている便潜血検査のほとんどは、便を1日1回、2日間採取する「2日法」という方法がとられています。
これは大腸がんからの出血が便に毎回付着しているとはかぎらないため、別の日に採取した2回の便を調べることで、大腸がんを見逃す確率を減らすためです。
便潜血検査の検査方法
便に含まれる血液を調べる方法には、「化学法」と「免疫法」の2つがあります。
化学法
化学法は便の中のヘモグロビン(赤血球に含まれるタンパク質)の量を測る方法で、大腸だけでなく胃や食道からの出血も検出することができます。
しかし食べものとして摂取した肉や魚の血液や鉄剤なども検出してしまい、偽陽性(本当は便に血が混じっていないのに、混じっているという結果が出てしまうこと)になることがあります。そのため検査前には食事制限が必要です。
またビタミンCを含む薬や栄養剤、トイレの洗浄剤などの影響を受け、偽陰性(本当は便に血液が混じっていたのに、混じっていないという結果が出てしまうこと)にもなります。便を長時間放置しても、血液が検出しづらくなり偽陰性になります。
化学法は以前は広く行われていましたが、偽陽性や偽陰性になりやすいという理由により、現在ではあまり行われていません。
免疫法
一方で免疫法は、ヒトの赤血球に含まれるヘモグロビンにだけ反応する抗体を用いて血液を検出する方法です。
そのため食べものとして摂取した肉や魚の血液には反応しませんし、ビタミンCの影響も受けません。
胃や食道からの出血は、胃酸により血液の成分が変わってしまうため検出できませんが、免疫法は偽陽性や偽陰性が少ない方法のため、現在の便潜血検査の主流の検査方法になっています。
便潜血検査のメリット・デメリット
からだへの負担が少ない
大腸がんを見つけるための検査には、便潜血検査のほかに大腸カメラ(内視鏡)やCTなどがあります。
ですがCTは被爆があります。また大腸カメラはおしりからカメラのついたスコープを入れるため、負担の少ない検査とはいえません。大腸に便が残っているとよく検査できないので、検査前は食事制限をしたり下剤を飲んだりする必要がありますし、検査にもほぼ1日かかります。
その点便潜血検査は便を採取して提出するだけなので、からだへの負担が少なく、短時間で終わります。免疫法であれば検査前の食事制限もありません。
費用が安い
便潜血検査は自治体や会社の検診で広く行われている検査であるため、無料もしくは検査費用の補助がでることが多いです。
また人間ドックの検査項目に含まれていたり、オプションで追加できたりもします。
自費で受ける場合でも費用は1,000〜2,000円程度なので、比較的安価で受けることができる検査です。
陰性=がんではないとは言い切れない
便潜血検査は便に血液が混じっているかを調べています。そのためがんがあっても、出血していなかった、出血しているが便に血が混じらなかった、などの理由で血液が検出できないと、がんをみつけられない場合があります。
つまり便潜血検査で陰性(便から血液が検出されなかった)でも、がんではないとは言い切れません。
陽性=がんとも言い切れない
がん以外の病気で出血している場合もありますし、痔や生理が原因で便に血が混じることもあります。
便潜血検査では、検出された血液が痔や生理によるものなのか、がんやほかの病気によるものなのかの区別はできません。
便潜血検査で陽性(便から血液が検出された)だったとしても、それだけでがんであるとは診断できないということです。
便潜血が陽性(便から血液が検出された)と言われたら
ここまでお話ししてきたように、便潜血検査が陽性でも、具体的にどのような病気がどのくらい進行しているのかまではわかりませんし、もしかしたらがんではなく、痔や生理による血液を検出している可能性もあります。
そう聞くと「便潜血検査ってやる必要あるの?」と思うかもしれません。
ですが便潜血検査は、いきなり病気の診断を行うものではなく、たくさんの人を検査して、病気の可能性がある人をピックアップするための検査です。
すべての人に精密検査を行うのは、時間もお金も人手も必要ですし、検査を受ける人のからだにも負担がかかります。
そこで「精密検査が必要な人をみつけるための検査」が、便潜血検査です。便潜血検査で陽性と言われたら、必ず精密検査を受けましょう。
精密検査でおもに行われているのは大腸カメラ検査です。小さながんであっても発見することができ、大腸がんなどの病気を見逃す確率はかなり低い検査です。
またポリープなどがみつかればその場で切除できるなど、検査と治療が同時に行える方法でもあります。
大腸がんの発症リスクは40代から高くなっていきます。がんの早期は自覚症状がないことも多く、症状が出るころには進行していて治療が困難になっているケースも珍しくはありません。
大腸がんは早期に発見して治療すれば、比較的治りやすいがんです。「きっと痔や生理の血が混じったのだろう」と自己判断して早期発見のチャンスを逃さないようにしてくださいね。