そもそも2類や5類ってなに?感染症の分類とは
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新型コロナウイルスの分類が、2023年5月8日に2類から5類へ引き下げられました。
ですが、
「そもそも2類や5類ってなに?どう違うの?」
「なぜ2類から3類や4類じゃなくて、いきなり5類へ変更するの?」
と疑問に思っているかたも多いのではないでしょうか。
そこで今回は、感染症の分類ついてお話します。
感染症の分類とは?
感染症、つまりヒトや動物などからヒトへうつる病気は、「感染症法」という法律で1類から5類までの5つのグループに分類されています。
このグループは、感染の広がりやすさや感染したときの重症化リスクの高さなどによって分けられており、グループごとに
- 感染者を入院させるか、行動制限をかけるか
- 汚染された場所への交通制限、汚染されたものの消毒などを行うか
- 医療費は公費負担か自費か
- 感染状況を国や自治体がどの程度把握するか
などの対応が異なります。
1類感染症
感染力がとても強く、感染した場合に死亡するリスクも高い、最も危険な感染症です。
1類感染症に分類されている感染症は以下のとおりです。
- エボラ出血熱
- クリミア・コンゴ出血熱
- 痘そう
- 南米出血熱
- ペスト
- マールブルグ病
- ラッサ熱
エボラやペストなど、名前だけでヤバいとわかる顔ぶれですね。
感染者はたとえ無症状でも就業制限がかけられ、原則として入院となります。しかしどこの病院でも入院できるわけではなく、入院、治療は1類感染症に対応できる感染症指定医療機関に限られます。
医師は1類感染症と診断したら、ただちに保健所へ届け出る必要があります。また汚染されたと思われる建物やエリアへの立ち入り禁止や交通制限といった措置もとられます。医療費(入院費)は公費負担です。
2類感染症
1類ほどではないものの、感染力が強く、感染した場合の重症化リスクも高い、危険な感染症です。
- 急性灰白髄炎(ポリオ)
- ジフテリア
- 重症急性呼吸器症候群(SARS)
- 結核
- 鳥インフルエンザ(H5N1)
症状がある感染者には就業制限がかけられ、原則として入院になりますが、無症状者に対しては行動制限はかけられません。入院は感染症指定医療機関に限られます。医療費(入院費)は公費負担です。
3類感染症
3類に分類されている感染症は以下のとおりです。
- 腸管出血性大腸菌感染症(O157)
- コレラ
- 細菌性赤痢
- 腸チフス
- パラチフス
これらの感染症は、1類や2類に比べれば危険性はそこまで高くはありません。
ですがこれらの感染症にかかっている人が飲食業などで働いていると、食べものなどを介して感染が広がり、集団食中毒などを起こすおそれがあります。そのため感染が広がるのを防ぐ目的で、感染者には就業制限がかけられます。
また3類からは必ず入院ではなく、症状に応じて入院するかしないかが決まります。感染症指定医療機関以外の病院でも入院が可能です。医療費も公費負担ではなく自費(通常の3割負担)となります。
4類感染症
このグループには「人畜共通感染症」といって、動物や虫などからヒトに感染する感染症がおもに分類されています。
- E型肝炎
- A型肝炎
- 狂犬病
- ボツリヌス症
- マラリア
- エキノコックス症
- オウム病
- サル痘
- ツツガムシ病
- デング熱
- 日本脳炎
- ライム病
- レジオネラ症
- レプトスピラ症 など
たとえばマラリアや日本脳炎、デング熱は蚊に刺されることで、狂犬病は犬にかまれることで、ツツガムシ病はダニにかまれることで、エキノコックス症は北海道で野生のキツネを触ることで感染します。
5類感染症
危険性はほかのグループと比べると高くありませんが、感染拡大を防ぐために国が感染症の発生状況を調査し、国民や医療機関へ情報提供を行う感染症です。
- 季節性インフルエンザ
- 後天性免疫不全症候群(エイズ)
- 梅毒
- 麻しん(はしか)
- メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症(MRSA)
- RSウイルス感染症
- A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌)
- 感染性胃腸炎
- クロイツフェルト・ヤコブ病
- 水痘(水ぼうそう)
- 性器ヘルペスウイルス感染症
- 手足口病
- 伝染性紅斑(リンゴ病)
- 突発性発しん
- 破傷風
- 百日咳
- 風しん
- へルパンギーナ
- マイコプラズマ肺炎
- 無菌性髄膜炎
- 流行性耳下腺炎(おたふくかぜ) など
はしかやおたふくかぜ、水ぼうそう、手足口病、RSウイルスなど、おなじみの感染症が分類されています。毎年冬に流行する季節性インフルエンザもこのグループです。
近年感染者が激増している梅毒も5類ですね。
また5類には強制入院や就業制限など、感染者の行動を制限する権限はありません。
ちなみに「どの感染症が何類か」、「どの動物や虫からどの感染症が感染するか」は臨床検査技師の国家試験にちょくちょく出題されます。
また1〜5類とは別枠で、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、新感染症というグループもあります。
新型インフルエンザ等感染症
新たにヒトからヒトに感染するようになったインフルエンザウイルスやコロナウイルス、または過去に流行していたが再び流行するようになったインフルエンザウイルスやコロナウイルスで、急速に感染が拡大することで国民の健康に重大な影響を与えるおそれのあるものが分類されます。
指定感染症
現在感染症法に定められていない感染症で、1~3類と同レベルの対策をしなければ国民の健康に重大な影響を与えるおそれのあるものが分類されます。
新感染症
ヒトからヒトへ感染する未知の感染症で、重症化リスクが高く、国民の健康に重大な影響を与えるおそれのあるものが分類されます。
なぜ新型コロナウイルスは2類からいきなり5類になるの?
先ほどお話ししたとおり、3類は集団食中毒などの原因となる感染症、4類は人畜共通感染症という分類です。
そのため新型コロナウイルスは、2類から3類や4類ではなく5類へと変更になるというわけです。
2類と5類は何が違うの?
2類と5類では、国や自治体、医療機関、そして私たち個人がとる対応が異なります。
感染者数の把握
すべての医療機関は、2類感染症と診断した患者さん全員を保健所へ届け出る必要があります。
一方で5類感染症の場合、麻しんや風しんなどはすべての医療機関で届け出る必要がありますが、季節性インフルエンザなどは特定の医療機関のみが感染者数を届け出るシステムになっています。
新型コロナウイルスも、2類相当のときは感染者全員を届け出ていましたが、5類になると届け出は特定の医療機関のみになります。また感染者数の発表も毎日ではなく週に1回になります。
入院、治療ができる医療機関
2類感染症の入院、治療ができるのは、感染症指定医療機関に限られていますが、5類感染症は多くの医療機関で対応が可能です。
新型コロナウイルスの場合、2類相当のときは感染症指定医療機関を中心とした特定の医療機関のみが患者さんを受け入れており、国や自治体が感染状況に応じて医療機関に要請し、ベッド数を確保していました。
また感染の疑いがある場合も、自治体が指定した医療機関の発熱外来を受診することになっていました。
これが5類になることで、発熱外来や自治体によるベッド数の調整などはなくなり、指定の医療機関以外でも受診、入院できるようになります(ただし新型コロナウイルスの診療を行うかどうかは、各医療機関の判断になります)。
今まではベッド数の確保のため、病院がコロナ用にベッドを確保すると補助金が出ていましたが、それも段階的に廃止される予定です。
感染者・濃厚接触者の行動制限
2類感染症の感染者は原則として入院が必要ですが、5類感染症では入院は必須ではありません。
新型コロナウイルスの場合、感染者や濃厚接触者には入院や宿泊施設での療養、自宅待機(外出自粛)などが要請されていました。また緊急事態宣言やまん延防止等重点措置、学校の休校、飲食店の営業時間短縮といった、感染していない人たちへの要請も行われてきました。
本来2類感染症では、無症状者や濃厚接触者への行動制限を行う措置はとれません。しかし新型コロナウイルスの場合は「新型インフルエンザ等対策特別措置法」という法律によって、これらの措置が可能になっていたわけです。
5類に引き下げられたことにより、これらの制限はなくなります。マスクの着用や外出自粛、検温の実施などは、個人やお店などそれぞれの判断に委ねられますが、厚生労働省は感染した場合は発症した翌日から5日間(5日目以降も症状があるときは回復してから24時間経過するまで)は外出を控え、10日間はマスクを着用することなどを推奨しています。
医療費や検査費用、ワクチン接種費用
2類感染症の医療費は公費負担(無料)ですが、5類感染症の医療費は自己負担(3割負担)です。
新型コロナウイルスも、2類相当のときは医療費は公費負担でした。それに加えて無料のPCR検査なども行われていました。
5類になることで、医療費は段階的に自己負担になっていきます。無料の検査所も終了しました。
ワクチンに関しては、2類のポリオやジフテリアのワクチンは赤ちゃんの定期接種として公費負担です。5類のインフルエンザば任意接種のため自己負担ですが、新型コロナウイルスのワクチンは、5類になっても当面の間公費負担を続けるそうです。
おわりに
感染症の分類についてご紹介しました。
感染症法はSARSやMARS、そして新型コロナウイルスなど、新たな感染症が発生、流行するたびに何度か改正をしてきました。
そう考えると、感染症法は日本における感染症との戦いの歴史でもありますね。