尿検査でわかること 検査の目的や結果の見方を解説!

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尿検査の結果の見方

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学校検診や職場の健康診断、人間ドックなどで、誰もが一度は尿検査を受けたことがあると思います。

「尿を調べて何がわかるんだろう」と疑問に思ったかたもいるでしょう。ですが尿検査は検査時にからだへの負担もなく、大がかりな機械も必要ありません。それにさまざまな法律で実施が定められている、実は重要な検査なのです。

今回は尿検査でわかることや、検査結果の見方についてご紹介します。

なんで尿を検査するの?

そもそも、尿はなぜつくられるのか、どうやってつくられているのかご存知ですか?

尿は腎臓によって、血液からつくられています。

血液はからだ中に酸素や栄養を運ぶ際に、からだの老廃物も受け取っています。腎臓は血液から老廃物をろ過して取り除き、血液をきれいにしています。このとき取り除かれた老廃物や余分な水分が、尿となって排泄されます。

また腎臓は、赤血球を増やすホルモンや血圧を調整するホルモンを分泌したり、骨をつくるためにカルシウムの吸収を促したりするなど、尿をつくる以外にも大切な役割を担う臓器です。

腎臓のはたらきが低下すると、からだ中に老廃物が蓄積してしまい、透析が必要になることもあります。

透析とは、はたらきが低下した腎臓のかわりに、人工的に血液から老廃物を取り除く治療法です。透析は2〜3日に1度、1回につき数時間行う必要があり、負担の大きい治療です。しかし透析には腎臓のはたらきをもとに戻す効果はないため、透析を始めたら一生続ける必要があります。

腎臓には予備力があるため、少しダメージを負ったくらいでは自覚症状はありません。逆を言えば、症状が出るころにはかなり深刻なダメージを受けていることが多いです。おまけに腎臓はダメージを受けても再生する力がありません。

そのため尿検査で腎臓に余力があるうちに病気を早期発見、治療することが重要なのです。学校や職場の検診で尿検査を行うことになっているのはこのためです。

尿検査で何がわかるの?

尿検査

尿糖

尿に含まれるグルコース(ブドウ糖)という糖の量を調べます。

尿から糖が検出されなければ陰性やー(マイナス)、糖が検出されれば陽性や+(プラス)と表記されます。「++」や「2+」など、+の数が増えるほど検出された糖の量が多いことを表しています。

健康であれば尿に糖が含まれることはありません。しかし腎臓のはたらきが低下したり、血液中のグルコース濃度(血糖値)が高くなりすぎたりすると、腎臓で吸収しきれなくなった糖が尿に出てきます。

おもに糖尿病の疑いがある人をみつけるために行う検査です。ほかにもステロイド薬 を服用しているかたや妊婦さん、高齢のかた、ストレスや疲労を感じているかたも尿に糖が出ることがあります。

尿タンパク

尿に含まれるタンパク質の量を調べます。

尿からタンパク質が検出されなければ陰性やー(マイナス)、タンパク質が検出されれば陽性や+(プラス)と表記されます。「++」や「2+」など、+の数が増えるほど検出されたタンパク質の量が多いことを表しています。

健康であれば血液中のタンパク質は腎臓で吸収されるため、尿に出てくることはありません。ですが腎臓のはたらきが低下すると、腎臓で処理されるはずのタンパク質が尿に出てきてしまいます。

このほかに、炎症が起きると尿にタンパク質を含む血液や粘液が混じるため、膀胱などの炎症や腫瘍をみつけるのにも役立ちます。

また立ち仕事や運動などによっても、尿にタンパク質が出ることがあります。これは起立性蛋白尿といって、生理現象のため病気ではありません。

検診ではこの起立性蛋白尿の影響をできるだけ避けるために、朝起きて最初の尿(寝ているあいだにつくられた尿)を検査することが多いです。

尿潜血

尿に血液が混じっていないかを調べる検査です。正確には、尿に含まれるヘモグロビンの量を調べています。ヘモグロビンとは赤血球(血液中の細胞のひとつ)に含まれている物質で、酸素をからだ中へ運ぶはたらきをしています。

尿から血液が検出されなければ陰性やー(マイナス)、血液が検出されれば陽性や+(プラス)と表記されます。「++」や「2+」など、+の数字が増えるほど検出された血液の量が多いことを表しています。

腎臓や膀胱、尿管など尿の通りみちに炎症やがん、結石などがあると、尿に血液が混じります。

また女性の場合は、生理の影響で尿に血液が検出されることもあります。尿の見た目が赤くなかったとしても、検査ではごくわずかな血液も検出できるので、可能なら生理中の尿検査は避けるようにしましょう。

尿比重

尿にはさまざまな成分が含まれているため、普通の水に比べて濃くなっています。尿比重検査は、この尿の濃さ(尿に含まれる成分の量)を調べる検査です。

腎臓はからだの状況に応じて、水分を吸収してからだに戻したり、逆に水分をたくさん排泄させたりして、尿の濃さを調整することでからだの水分量を調節しています。

腎臓に病気があったりはたらきが低下したりすると、からだの水分量を調節することができなくなってしまい、薄い尿や濃い尿が排泄されるため、尿比重は異常値になります。

比重が基準値より低ければ薄い尿(希釈尿)、高ければ濃い尿(濃縮尿)であることを表しています。

尿崩症という病気では尿を濃縮するはたらきが低下するため、薄い尿が大量に出てしまいます。一方で糖尿病では糖が、ネフローゼ症候群ではタンパク質が尿に排泄されてしまうため濃い尿になります。

このほかに大量の水分をとったときには薄い尿、大量に汗をかいたり下痢をしたりして水分を失うと濃い尿になります。

尿沈渣

顕微鏡

尿を遠心分離器で遠心すると、尿に含まれている細胞が底に沈みます。この沈んだ細胞を顕微鏡で観察して、細胞の数や形を調べます。

赤血球

腎臓や膀胱の炎症や結石、がんなどでは、出血により尿に赤血球がみられます。

また赤血球は出血している部位によって形が違ってくるため、赤血球を顕微鏡で観察することで、出血部位を推測することができます。

白血球

腎炎や膀胱炎、前立腺炎など、炎症をともなう病気では、尿に白血球がみられます。

上皮細胞

上皮細胞とは、からだや臓器の表面を覆っている細胞のことです。上皮細胞には扁平上皮細胞、尿路上皮細胞、尿細管上皮細胞などがあります。

扁平上皮細胞は尿道の入口にあるため、健康な人の尿にもわずかにみられることがありますが、これらの細胞が多量にみられる場合は、炎症や腎臓の障害などが疑われます。

私が学生だったころは、尿路上皮細胞は移行上皮細胞と呼ばれてましたね。

結晶

尿にはさまざまな成分が含まれています。これらの成分が固まり、結晶となってみられることがあります。

結晶には成分によってさまざまな種類があり、健康な人の尿にもみられるものもあれば、病気をみつける手がかりになるものもあります。

たとえばシュウ酸カルシウム結晶は、結石の原因となることもありますが、健康な人の尿にもよくみられます。

ほうれん草にはシュウ酸が多く含まれているので、ほうれん草をたくさん食べるとシュウ酸とからだの中のカルシウムが結合して、シュウ酸カルシウム結晶になります。

一方でシスチン結晶やビリルビン結晶などは、健康な人の尿にはみられません。

遺伝性の病気によりアミノ酸のひとつであるシスチンが吸収できないと、尿に排泄されてシスチン結晶になります。

ビリルビンは古くなった赤血球が壊されたときにできる成分で、肝臓で処理されます。しかし肝臓や胆道に病気があると処理できずに血液中に流れ出てしまい、やがて尿から排泄されます。

円柱

尿の通りみちである尿細管というところで、タンパク質などがゲル状に固まり、尿に排泄されたものを円柱といいます。

尿細管はホースを想像してもらえればわかりやすいと思います。その中でゲル状に固まるので、顕微鏡で見ると円柱の名前のとおり細長いかたちをしています。円柱の中に赤血球や白血球などが入っていることもあります。

健康な人の尿では円柱はほとんどみられません。円柱は腎臓に障害が起きていることを示しています。

細菌・真菌・原虫

腎臓や膀胱に細菌が感染することで、腎盂腎炎や膀胱炎を引き起こします。すると尿にもたくさんの細菌がみられます。

また性感染症の原因となるトリコモナスという原虫が、尿にみられることもあります。

尿検査でひっかかったら?

健康診断の結果

尿検査でなんらかの異常値が出た場合、追加で血液検査やエコー検査、CT、腎生検(腎臓に針を刺して細胞を採取する検査)などの精密検査を行う必要があります。

受診する科は泌尿器科や腎臓内科です。お子さんなら小児科ですね。

多くの場合、尿検査は病気の疑いがある人をみつけることはできますが、病気を診断することまではできません。

たとえば尿潜血が陽性(尿から血液が検出された)の場合、腎臓や膀胱などからの出血が疑われますが、はっきりとした出血部位や出血の原因(結石、がん、炎症など)はより詳しく検査をしないとわかりません。

尿検査は病気の診断のために行うというよりは、幅広い人たちに検査を行い、病気をもっている可能性がある人をピックアップするために行うものです。そのため病気がある人をスルーしてしまわないように、少しでも異常があればひっかけるようにしています。

つまり尿検査でひっかかったからといって、深刻な病気であるとはかぎりません。先ほどお話ししたように、起立性蛋白尿や生理など、病気ではないものが原因で異常値が出ている可能性もあります。

ですが「特に症状もないし、きっと病気ではないだろう」と自己判断するのは危険です。

腎臓は少しダメージを負ったくらいでは、自覚症状はありません。自覚症状が出てから治療するのでは、病気が進んでしまっているおそれがあります。

まだ自覚症状がない早い段階で病気をみつけ、治療につなげることが尿検査の重要な目的です。尿検査でひっかかったら、必ず精密検査を受けましょう。

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