臨床検査技師国家試験 頻出ポイントまとめ
記事内に広告を含みます。
臨床検査技師を目指す学生さんの中には、「そろそろ国家試験の勉強を始めようと思うけど、どこから始めたらいいのかわからない…」という人も多いのではないでしょうか。
実は臨床検査技師の国家試験は、毎回全く新しい問題ばかりが出るわけではありません。むしろ過去に何度も似たような問題が出されていることがかなり多いです。
そのため国家試験の勉強をするなら、ただやみくもに教科書を1ページ目から読んでも、時間がかかるだけでたいして点数はとれません。過去に何度も出題されているポイントを重点的に勉強することが、国試対策には一番効果的です。
そこで臨床検査技師の国家試験の頻出ポイントについて解説します。
国家試験の日程や合格率、具体的な勉強法については、こちらの記事もどうぞ。
臨床検査技師国家試験の内容
臨床検査技師の国家試験はマークシートで、5つの選択肢の中から適切なものを選ぶ形式です。
試験は午前の部と午後の部にわかれており、問題はそれぞれ100問ずつ、合計200問。1問1点で60%(120点)以上とれれば合格です。
試験科目は10分野で、ここ数年の出題される科目と配点は以下のとおりです。
- 問1~問10:臨床検査総論(検査管理総論及び医動物学を含む)…20点
- 問11~問15:臨床検査医学総論(臨床医学総論及び医学概論を含む)…10点
- 問16~問28:臨床生理学…26点
- 問29~問44:臨床化学(放射性同位元素検査技術学を含む)…32点
- 問45~問58:病理組織細胞学…28点
- 問59~問67:臨床血液学…18点
- 問68~問78:臨床微生物学…22点
- 問79~問89:臨床免疫学…22点
- 問90~問94:公衆衛生学(関係法規を含む)…10点
- 問95~問100:医用工学概論(情報科学概論及び検査機器総論を含む)…12点
最も多く出題されるのが臨床化学、そして病理組織細胞学、臨床生理学、臨床微生物学、臨床免疫学と続きます。逆に臨床検査医学総論や公衆衛生学、医用工学概論は配点が少なめです。
臨床検査総論
試験内容
臨床検査総論では、尿検査や糞便検査、脳脊髄液検査、遺伝子検査などが出題されます。また検査管理総論や医動物学もここに含まれるので、精度管理や寄生虫についての問題も出ます。
尿検査と寄生虫の問題数が多い印象です。特に寄生虫は検査法や感染経路、虫卵の特徴など覚えることが多いので、ここを重点的に勉強しておくといいでしょう。
頻出ポイント
- 尿試験紙法で偽陽性、偽陰性になる項目とその原因
- 尿沈渣でみられる結晶※写真問題
- ヘモグロビン尿とミオグロビン尿の原因疾患
- 尿の放置による検査値の変化
- 疾患ごとの便の性状
- 寄生虫卵の大きさと特徴※写真問題
- 寄生虫の感染経路と中間宿主
- 寄生虫卵の検査法
- 衛生動物と媒介する疾患の組み合わせ
- 健常者の脳脊髄液の性状
- 疾患による脳脊髄液の検査値の変化
- 滲出液と漏出液の鑑別
- 全血の放置による検査値の変化
- 精度管理法
- 空気感染予防策が必要な疾患
- バイオハザードマーク
臨床検査医学総論
試験内容
臨床検査医学総論では、各分野の基礎的な内容が幅広く出題されます。
臨床検査医学総論の勉強をする、というよりは、ほかの各分野を勉強していけば解けるようになる問題が多いです。
頻出ポイント
- 一次救命措置
臨床生理学
試験内容
臨床生理学では、生理検査についての知識が問われます。主なものは心電図、肺機能、超音波、脳波、心音図、筋電図など。比較的配点の大きい分野です。
心音図や筋電図はあまり問題数が多くないので、勉強するなら心電図、肺機能、超音波、脳波を中心に。
頻出ポイント
- 心電図の波形と成り立ち
- 心電図の基準値と異常値を示す疾患
- 心筋梗塞の心電図でST上昇と異常Q波が出現する誘導とその梗塞部位
- 右胸心と四肢電極のつけ間違いの心電図※写真問題
- ホルター心電図の誘導
- 代表的な不整脈波形(房室ブロック、心房細動、心室頻拍、右脚ブロック、洞停止など)
- 運動負荷心電図の禁忌と検査中止基準
- 拘束性換気障害と閉塞性換気障害の分類と主な疾患
- 肺気量分画
- フローボリューム曲線の形の違いによる疾患の鑑別※写真問題
- 肺拡散能検査(DLco)の混合ガス、測定法、基準値、異常値を示す疾患
- 生体内の平均的な音速
- 超音波検査で使用するプローブの種類と対象臓器
- 超音波検査のアーチファクト
- 腹部超音波検査での各臓器の見え方※写真問題
- 腹部超音波検査での代表的な疾患(脂肪肝、肝硬変など)でみられる所見
- 10/20法による脳波電極の記号と部位
- 異常脳波所見と疾患の組み合わせ
- 心雑音の種類と原因疾患
- ABRのⅠ〜Ⅵ波の起源
- 大脳皮質の領域
- 呼吸性/代謝性のアシドーシスとアルカローシスのときのpH、PaCO2、HCO3-
臨床化学
試験内容
臨床化学では、糖質、蛋白質、脂質、酵素、ビタミン、電解質、ホルモンなどが出題されます。
問題数は全分野中最多。かつ範囲が広いため、なかなか勉強が難しい分野でもあります。糖も蛋白も酵素もビタミンもホルモンも、とにかく種類が多いので表にまとめるなどして頭の中で整理しておきましょう。
頻出ポイント
- 糖の種類(名称、炭素数)
- 血糖の検査項目、血糖値を反映する期間、糖尿病での検査値の変化
- アミノ酸の種類
- 無機質と結合蛋白質の組み合わせ
- 生体内で炎症時に増加/減少する蛋白質
- リポ蛋白の分類
- 血清蛋白電気泳動の分画
- 酵素と増加する疾患の組み合わせ
- ビリルビンの性状(直接/間接ビリルビンの違い、増加する疾患)
- ALPアイソザイムの由来臓器と疾患の組み合わせ
- LDアイソザイムの由来臓器と疾患
- アミラーゼアイソザイムの種類と増加する疾患
- 骨形成/骨吸収マーカーの種類
- 心筋梗塞のマーカーの種類と出現順
- ビタミン(別名、水溶性か脂溶性かの区別、欠乏症と疾患の組み合わせ)
- ホルモンの種類(名称、生産される臓器、生理作用)
- 血中薬物濃度測定が有用な薬物の種類と特徴
- 食事による検査値の変動
- 各種機能検査
- 細胞内小器官の役割
病理組織細胞学
試験内容
病理組織細胞学では、解剖学や病理学といった病理の基礎から、病理標本の作製方法、染色法、細胞診などが出題されます。
標本の作製法(固定、脱灰、包埋、薄切)と各染色法(使用する染色液や染色結果など)は暗記することが多いので大変ですが、必ず出題されるうえに配点も高いので、押さえておけば得点に結びつきます。
頻出ポイント
- 外胚葉、中胚葉、内胚葉から分化するもの
- 臓器と被覆上皮の組み合わせ
- 健常成人の臓器の重量
- 後腹膜臓器
- 炎症の四徴候
- 腫瘍の分類(発生組織、良性か悪性か)
- 癌抑制遺伝子の種類
- 主な劇物
- ホルマリンの特徴とホルマリンを含む固定液
- 脱灰処理
- ミクロトームの種類と特徴、刃角、逃げ角、引き角
- 凍結切片作製法
- 各染色法の名称、染色の目的、染色液、染色結果
- 免疫組織化学染色のマーカー
- 細胞診での細胞の鑑別(腺癌、扁平上皮癌、小細胞癌)※写真問題
- 細胞診検体処理法
- 透過型電子顕微鏡標本作製法
- 病理解剖で臨床検査技師が実施できること
臨床血液学
試験内容
臨床血液学では、赤血球、白血球、血小板、染色体や遺伝子異常、凝固線溶系などが出題されます。生化学や病理と比べて、意外と配点は高くありません。
凝固が苦手という人が多いですよね(私も苦手です)。ですが凝固はそこそこの問題数が出題されるので、対策しておきたいところです。
頻出ポイント
- 好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、単球の特徴と増加/減少する疾患
- 白血球の形態異常の種類とそれがみられる疾患※写真問題
- 赤血球の形態異常の種類とそれがみられる疾患※写真問題
- MCV、MCHC、MCHによる貧血の鑑別と主な貧血の種類
- 網赤血球の特徴と増加/減少する疾患
- 血小板数、PT、APTTの疾患による検査値の変化
- フローサイトメトリ法(前方散乱光と側方散乱光)
- 基準範囲に性差を認める血算項目
- 発作性夜間ヘモグロビン尿症の検査値
- 特徴的な血液細胞(ファゴット細胞、フラワー細胞など)※写真問題
- 造血器腫瘍の染色体、遺伝子異常
- 常染色体、性染色体の異常による疾患
- 特殊染色の試薬と染色結果
- 健常成人における鉄の体内分布比率
- 多発性骨髄腫の臨床所見と検査値
- DICの検査値
- ビタミンK依存性因子
臨床微生物学
試験内容
臨床微生物学では、細菌、真菌、ウイルスの知識や、培養法、グラム染色、抗菌薬などが出題されます。
主要な細菌については、グラム陽性か陰性か、好気性か嫌気性か、乳糖分解や硫化水素産生などの性状をそれぞれ覚えておく必要があります。ここの暗記は大変ですが、暗記さえしておけばそれなりに点数がとれるところでもあります。
頻出ポイント
- 各細菌の性状(グラム染色、酸素要求性、オキシダーゼ、白糖/乳糖分解、硫化水素産生、芽胞の有無など)
- 菌と分離培地の組み合わせ
- 菌と染色法の組み合わせ
- 培地の滅菌法
- 抗菌薬の種類と作用機序
- 各消毒薬の特徴
- 菌の遺伝形質の伝達(バクテリオファージ、プラスミド)
- 血液、髄液培養で汚染菌の可能性が高いもの
- 抗結核薬の種類
- 原核生物と真核生物の特徴
- 輸入真菌症の原因菌
- マイコプラズマ、リケッチア、クラミジア、ウイルスの特徴
- マイコバクテリウム属の特徴
- 衛生動物が媒介する疾患
- 主なウイルスの核酸の種類、特徴、疾患
- イムノクロマト法による抗原検査が行われているウイルス
- エンベロープを持たないウイルス
- 主なウイルスの感染経路
- HIVの感染経路、病原性、確認検査
- プリオンの不活性化法、原因となる疾患
臨床免疫学
試験内容
臨床免疫学では、抗原や抗体、補体といった免疫のしくみから、自己免疫疾患や抗核抗体などの疾患、電気泳動などの検査法などが出題されます。また輸血についてもここで出されます。
個人的には出やすいポイントを押さえれば、範囲も生化学ほど膨大ではなく、病理や細菌ほど覚えることが多いわけでもないので、点数が取りやすい分野だと思います。
頻出ポイント
- 免疫担当細胞の特徴
- 補体の成分と機能
- 補体の経路(古典経路、副経路、レクチン経路)
- 血清蛋白電気泳動の分画
- MHC分子のクラスⅠとクラスⅡの違い
- 腫瘍マーカーと腫瘍の組み合わせ
- 免疫測定法と標識物質
- 抗核抗体の染色パターンと抗体、疾患の組み合わせ
- バセドウ病の症状と検査値の変化
- 自己免疫疾患と自己抗体の組み合わせ
- CRP(C反応性蛋白)
- 各肝炎ウイルスの特徴と検査項目
- Ⅰ〜Ⅴ型アレルギーの分類
- ABO血液型(抗原、抗体、亜型)
- 血液型のオモテウラ試験の原理、不一致の原因
- カラム凝集法の見方※写真問題
- 交差適合試験の原理
- Rh不適合妊娠
- 輸血副作用の機序、原因
公衆衛生学
試験内容
公衆衛生学では、医療統計や疫学研究、予防医学、医療保険といった分野から出題されます。
配点は10点と低め。難問も多いので、出やすいポイントをしっかり押さえて、わかる問題を取りこぼさないことが重要です。
頻出ポイント
- 国勢調査、人口動態統計、国民生活基礎調査、患者調査、国民健康・栄養調査の内容
- 統計指標(平均寿命、合計特殊出生率、年齢調整死亡率、周産期死亡率など)の意味
- 感度と特異度の関係
- 職業病、健康障害の原因物資と症状、検査項目
- 水道法による水質基準で検出されてはならないもの
- 新生児マススクリーニング対象疾患
- 予防医学(一次予防、二次予防、三次予防)
- 予防接種法に基づく定期の予防接種の対象
- 感染症法の分類(1〜5類)
- 保健所の業務
- 世界保健機関(WHO)が行っているもの
- 介護保険制度
- メタボリックシンドローム診断基準
医用工学概論
試験内容
医用工学概論では、電気回路やコンピューターなど、医療機器を扱うのに必要な工学の知識が問われます。
配点が低めでとっつきにくいので、捨て科目になりがちです(私も捨てました…)。
頻出ポイント
- マクロショックとミクロショック
- 2進数と16進数、bit
- 電子天秤の設置場所
- 各トランスデューサの名称と変換
- 医療機器関連図記号※写真問題
- 電気回路での合成抵抗の求め方※写真問題
- 論理演算(ベン図)
おわりに
やや個人的な主観が入っていますが、特によく出ると思うポイントにしぼってご紹介しました。
臨床検査技師の国家試験では、過去問と似た問題がよく出題されます。中には今まで出題されたことがない初見問題や、教科書の隅まで読んでも載っていないような難問も出てきますが、すべて解いて満点を取る必要はありません。60%解ければ合格です。
まず過去問を数年ぶん解いて出題の傾向をつかみ、よく出る問題を確実に正解できるようにしましょう。