臨床検査技師は夜勤をするの?夜間や休日の仕事内容とは
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病院では、夜間や休日でも救急外来に患者さんが運ばれてきたり、入院中の患者さんの容態が急に悪くなってしまったりすることがあります。
そうした事態に対応するため、病院ではスタッフが24時間365日、交代で勤務しています。
医師や看護師はイメージしやすいかと思いますが、血液検査などを行う臨床検査技師も同様に、夜間や休日でも検査に対応しています。
夜間や休日の勤務には、夜勤、当直、オンコールなどがあり、病院の規模や体制によって勤務形態は異なっています。それぞれの違いや実際の仕事についてご紹介します。
夜勤
日勤(通常の昼間の勤務)の人たちが帰るころに出勤し、翌日日勤の人たちが出勤してきたら帰宅するのが夜勤です。
たとえば日勤者が9時から17時までの8時間勤務の場合、夜勤者は17時から翌日の9時までの16時間勤務になります。
「それだと夜勤者が働きすぎじゃないの?」と思われるかもしれませんが、夜勤者は夜勤に入る日の日勤(17時まで)と夜勤が終わったあとの日勤(9時以降)はお休みです。これで2日間で16時間、つまり1日あたり8時間(日勤者と同じ時間)働いていることになります。
労働時間は週40時間までと法律で決まっています。そのため、たとえば「月曜から金曜までずっと日勤」でも、「月曜から水曜まで日勤、木曜の夜に夜勤」でも、労働時間が週40時間を超えないように勤務が組まれています。
ですが夜勤体制の場合、日勤は「夜勤が終わって帰宅した人」と「これから夜勤の人」が常にいない状態になります。そのため臨床検査技師が数名から十数名程度の病院では、夜勤体制をとるのは困難です。
規模が大きく、救急車もたくさん受け入れていて、臨床検査技師の人数も多いような病院じゃない限り、夜勤をやっているところは少ないと思います。
実際私のまわりで臨床検査技師が夜勤をやっているのは、周辺で一番大きい高度救命救急センターがある総合病院くらいです。
多くの病院では夜勤体制をとっているのは看護師だけで、医師や診療放射線技師、臨床検査技師などは、次にお話する当直のところがほとんどです。
当直(宿直)
日勤を普通に働いたあと、翌日の日勤が始まるまで働くのが当直です。宿直とも言いますね。
その場合24時間勤務になるので、当直が終わって帰宅した日の翌日も休みにすれば、労働時間が3日で24時間、1日あたり8時間になりますが…実際は休みにはなりません。
たとえば月曜日に当直の場合、月曜日の9時から17時まで普通に日勤をして、そのまま17時から翌日(火曜日)の9時まで当直です。そして水曜日からまた日勤が始まります。
これだと労働時間が週40時間を超えそうですが、これが超えないんです。実は当直は、労働時間に含まれないのです。
当直にはざっくり言うと「日勤の仕事は行わず、仕事はあってもちょっとしたもので、睡眠時間もしっかりとれる」という条件があります。この条件を満たしていれば、当直は労働時間にカウントしないことになっています。
つまり「日勤の仕事が終わらない」とか、「当直中も日勤とほぼ同様の仕事をしている」、「忙しくて眠れない」という当直は当直ではありません。
その場合は当直ではなく夜勤にするか、当直の時間を時間外労働として残業代を支給する必要があります。
そのような忙しい仕事がなく、ゆっくり寝ていられるものを当直といいます。
…建前では。
オンコール
夜勤や当直のほかに、オンコールというものもあります。病院によっては待機や呼び出しなどとも呼ばれます。
これは「病院から連絡があったらすぐ来られるようにしておく」というものです。
たとえば麻酔科医や手術室の看護師は、夜間や休日に緊急手術があれば病院に呼び出されます。そのとき誰にも連絡がつかなかったら困りますから、「今日は連絡があったらこの人が応じる」と当番を決めておくわけです。
オンコールの場合、病院から呼び出しがなかったとしても待機料がもらえます(本当にちょっとですけど)。呼び出しがあったらそのぶんの残業代が出ます。
臨床検査技師の場合、夜間にほとんど検査が出ないような病院では、夜勤や当直ではなく、検査があるときだけ呼ばれるオンコールのところもあります。
また夜勤や当直のほかに、特定の部門に別にオンコール体制をとっているところもあります。
たとえば臨床検査技師が内視鏡や心カテ(心臓の血管にカテーテルという管を通し、血管の詰まりを取り除く治療などを行うこと)などに携わっている場合、夜間に内視鏡や心カテなどを行うときは、当直の臨床検査技師も対応します。するとその間救急外来や病棟の検査をする人がいなくなってしまうため、オンコールで呼び出された人が検査室に来て、内視鏡や心カテなどが終わるまで検査を担当します。
実際の当直
当直の仕事内容
夜間は通常の外来もやっていませんし、入院患者さんも寝ているので、救急外来に来た患者さんや容態が急変した入院患者さんの対応が当直の主な仕事です。
夜間も昼間と同じ治療を行うのは難しいですから、緊急性の高いものに限定して行っています。
臨床検査技師の当直も同じで、夜間は緊急性の高い検査のみ行っています。実施している検査項目は病院によって異なりますが、患者さんの病状を知るための血液検査、尿検査、感染症検査や、出血していたり緊急手術になる患者さんには輸血検査、心筋梗塞などが疑われる場合は心電図検査などですね。
これらの検査を臨床検査技師が1〜2名で、当番制で担当しています。
私が働く病院では、臨床検査技師の当直は1名で、月に1〜3回ほどあります。
朝いつもどおり出勤して夕方まで日勤をやります。日勤の人たちが仕事を終えて帰宅していく中ひとり検査室に残り、翌日みんなが出勤してくるまで過ごします。
当直中は院内用のPHSを持ちます。緊急の検査があればそこに連絡がくるので、検査室に送られてきた検体(血液や尿など)を検査したり、患者さんのところへ心電図検査に行ったりします。
ですが緊急の検査がなければ基本的に自由に過ごせます。食事をしたり、当直室でテレビを見たり寝たりできます。
……建前では。
実際の当直
実際の当直は、救急車で患者さんが次から次へと運ばれてくるので、ひっきりなしに検査をやっています。
やっと救急外来がひと息ついたと思ったら、今度は病棟から、胸が痛いと言う患者さんがいるから心電図を検査しにきてと連絡がきます。心電図を検査している間にPHSが鳴って、また救急外来から採血が送られてきます。
吐血したとか緊急手術中に出血したとかで、血液製剤を抱えて救急外来や手術室まで真夜中の病院をダッシュしたこともあります。
いつPHSが鳴るかわかりませんから、もちろんお風呂には入れません。ベッドに横になれても、いつPHSが鳴るのかと思うと寝た気がしません。
朝になれば入院患者さんの採血が大量に送られてきます。検査機器の毎日のメンテナンスだって必要です。これらを外来診療が始まって外来患者さんの採血が送られてくる前に終わらせておかないといけません。
私が働く病院では当直が終わればその日は帰れることになっていますが、それでも忙しくてお昼くらいまで帰れないこともあります。
…睡眠時間がとれる?睡眠どころかごはんを食べる時間もないくらいですよ?日付が変わるころになってもろくに食事もできていないとか、明け方まで一睡もしていないなんて、珍しいことじゃありません。
しかも当直では、1人でさまざまな分野の検査をしなければなりません。たとえば生理検査担当の技師は心電図検査は慣れていますが、血液検査や尿検査は日当直のときにしかやりません。その状況で迅速かつ正確に検査結果を出し、何かトラブルが起きても自分ひとりで対処しなければならないという緊張感があります。
当直の忙しさは病院によって異なります。朝までゆっくりできるところもあるでしょう。ですが私がやっているような当直は、決してレアケースではないと思います。
当直をすれば当直手当がもらえます。ですが拘束時間に対して少なく、時給換算すると最低賃金は軽く下回ります。通常の残業なら、深夜に働けば割増賃金がもらえるはずなんですけどね。
ちなみに当直のほかに日直というものもあります。これは土日祝日の昼間(平日の日勤と同じ時間)働くというものです。もちろんこれも労働時間に含まれませんが、やっていることは当直と同じです。休みが1日つぶれます。
私が働く病院では、心カテのオンコールもやっています。オンコールのときはすぐ病院に行けるようにしていないといけないので、お酒は飲めませんし遠出もできません。土日祝日がオンコールだと、せっかくの休みなのに買い物すらままなりません。
私はオンコールのとき、夜中の2時に呼び出されて5時近くに帰宅し、一瞬寝てまた日勤で出勤したことがあります。真冬にお風呂に入っている最中に呼ばれて、髪もろくに乾かないまま寒さに震えながら病院に行ったこともあります。
24時間365日、誰かが検査室にいないといけないため、お盆や年末年始、ゴールデンウィークでも日当直やオンコールが入ります。長期の休みなんて何年もとった覚えがありません。
「寝られない当直」の問題
当直は「忙しくなく睡眠時間もとれること」が条件のはずなので、本来なら多くの病院で行われている「寝られない当直」は、当直ではなく夜勤にするか、残業代を払うべきなのでしょう。
みなさんが夜間に病院に運ばれたとき、自分の検査をする人が、夕食も食べられず朝から働いていて一睡もしていないと聞いたらどうですか?コンディションが整っている人に検査してほしいと思いませんか?
ですが現在の人員のまま夜勤体制にすれば、仕事がまわらなくなります。また病院も経営が厳しいところが多く、夜勤にするために人員を増やしたり、残業代を支払ったりする余裕はありません。だから現状は限りなくブラックに近いグレーだとは思いますが、当直でやらざるを得ないわけです。
おわりに
臨床検査技師の夜勤や当直についてご紹介しましたが、自分で書いていてあまりのブラックっぷりになんだか悲しくなってきました…。
以前美容院で「お仕事何されてますか?」みたいな会話の流れで当直の話をしたら、「え…それめちゃくちゃブラックですね」と美容師さんに軽く引かれたことがあります…。
若いころは当直が終わったあとに買い物に繰り出したこともありましたが、今は翌日以降がツラすぎるので帰宅したらひたすら寝ています。当直をするたびに寿命が縮んでいる気がします。そろそろ当直をやる体力がありません…。