抗原と抗体の違いは?からだを守る免疫のしくみ

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からだを守る免疫のしくみ

Illustration by storyset by Freepik

コロナ禍以降、「抗原検査を受ける」とか「ワクチンを打って抗体をつける」といった言葉をよく耳にするようになりましたね。

ですが「そもそも抗原と抗体って何?どう違うの?」と疑問に思っているかたもいるのではないでしょうか。

そこで今回は、抗原と抗体とは何か、そしてからだを守ってくれている免疫のしくみについてお話しします。

抗原とは

抗原とは、わたしたちの細胞、そしてウイルスや細菌がもっている、タンパク質や糖質からなる物質です。

抗原は目印や標識のようなもので、ヒトのからだはこの抗原を見分けることで、「自分」か「自分ではない」かを判別しています。からだの中にウイルスや細菌が侵入してきたとき、からだはこの抗原をチェックすることで、自分ではないもの(=敵)が入ってきたと認識します。

また抗原はウイルスや細菌ごとに違ったかたちをしています。つまりインフルエンザウイルスにはインフルエンザウイルスの抗原が、新型コロナウイルスには新型コロナウイルスの抗原があるというわけです。

抗原のかたちはさまざま

抗体とは

からだは敵の侵入を感知すると、敵を排除しようとします。このとき敵を攻撃するためにつくられるのが、抗体と呼ばれるタンパク質です。

抗原がウイルスや細菌ごとに異なるかたちをしているように、抗体もそれぞれの抗原に対応するかたちをしています。

抗原と抗体の関係は、よく鍵穴と鍵にたとえられます。どんな鍵穴にも差し込める鍵がないのと同じで、抗体は特定の抗原にだけ反応するようになっています。

たとえばインフルエンザウイルスの抗原には、インフルエンザウイルスに対する抗体が攻撃します。インフルエンザウイルスに対する抗体は、新型コロナウイルスへは攻撃できません。

免疫のしくみ

からだには、ウイルスなどの敵が侵入してきたときに、敵を攻撃してからだを守るしくみが備わっています。このしくみを「免疫」といいます。

免疫には大きくわけて、「自然免疫」と「獲得免疫」があります。

自然免疫

自然免疫は生まれたときからからだに備わっている免疫のシステムです。

からだの中にウイルスが侵入すると、白血球の一種であるマクロファージや好中球という細胞がウイルスを食べて攻撃します。

ウイルスを食べて攻撃

獲得免疫

マクロファージは食べたウイルスから抗原の情報を集めます。マクロファージが集めた抗原の情報は、やがてヘルパーT細胞という細胞へ伝えられます。

抗原の情報を伝える

ヘルパーT細胞はいわば免疫の司令塔。ヘルパーT細胞は抗原の情報を受け取ると、B細胞に抗体をつくるように命令を出します。命令を受けたB細胞は抗体をつくってウイルスを攻撃します。

抗体で攻撃

またヘルパーT細胞はキラーT細胞に、ウイルスに感染してしまった細胞を破壊するように命令します。

感染した細胞を攻撃

こうしてからだは侵入してきたウイルスなどの敵を攻撃し、身を守っているのです。

さらにウイルスがからだからいなくなると、メモリーB細胞が抗原の情報を記憶します。

抗原の情報を記憶

こうすることで、次にまた同じウイルスが侵入してきたとき、すぐに抗体をつくってウイルスを攻撃することができるわけです。

このように、一度侵入してきた敵の情報を記憶しておき、再び同じ敵が侵入してきたときにすぐに攻撃できるしくみのことを獲得免疫といいます。

一度かかった病気にかかりにくくなる、かかっても軽くすむ、というのは、この獲得免疫のおかげです。

また獲得免疫はさらに2つにわかれており、B細胞が抗体をつくって攻撃するしくみを「体液性免疫」、キラーT細胞が感染した細胞を破壊するしくみを「細胞性免疫」といいます。

武器で遠距離攻撃するのが体液性免疫、敵を自分で直接攻撃するのが細胞性免疫、というイメージですね。

自然免疫は「自分」か「自分ではない=敵」かだけを見極め、敵と判断すればインフルエンザウイルスだろうが新型コロナウイルスだろうが関係なく、幅広い敵に対してすぐに攻撃を始めます。ですが敵の情報を記憶しておくことはできません。

獲得免疫は自然免疫と比べるとはたらき始めるのに時間がかかりますが、敵となるウイルスなどをピンポイントで、かつ強力に攻撃することができます。また自然免疫ではカバーしきれない、感染した細胞などへの対処も可能です。

このように自然免疫と獲得免疫が協力し合うことで、ウイルスなどの敵からからだを守っています。

免疫とワクチン

ワクチン

感染症にかからないようにする、または感染しても重症化しないようにするためのワクチンですが、これは免疫のしくみを利用しています。

ワクチンには、ウイルスや細菌を殺して毒性をなくしたものや、毒性を弱めたものが含まれています。ワクチンがからだの中に入っても、ウイルスや細菌の毒性はなくなっていたり弱まっていたりするので、感染症を発症することはありません。

ですが先ほどお話しした免疫のシステムははたらいており、抗体がつくられて記憶されます。

そのため毒性がある本物のウイルスや細菌が侵入してきたとしてもすばやく攻撃できるため、発症しなかったり発症しても軽症で済んだりするのです。

免疫とアレルギー

花粉症

アレルギーにも免疫のシステムが関わっています。

本来免疫は、からだにとって敵であるウイルスや細菌、がん細胞などの異物を攻撃するためのものです。

ところがこの免疫のシステムが、食べものや花粉、ハウスダスト、カビ、ダニ、金属、お薬など、異物ではあるけど敵ではないものにも過剰に反応してしまい、くしゃみや鼻水、じんましんなどさまざまな症状があらわれることがあります。この反応がアレルギーです。

こうして起こるアレルギーの病気は、食物アレルギーやアトピー性皮膚炎、花粉症などが代表的です。

おわりに

抗原と抗体とは何か、そして抗原や抗体が関わる免疫のしくみについてお話ししました。

免疫のしくみや細胞のはたらきを知るのに、「はたらく細胞」という漫画もおすすめです。この記事にも出てきた好中球やマクロファージ、ヘルパーT細胞などが擬人化して登場します。楽しみながら細胞のはたらきを学ぶことができますよ。


自分のからだの中で、細胞たちがこうしてウイルスなどと戦ってくれていると思うと驚きですよね。

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