臨床検査技師になるには大学と専門学校どちらがいい?それぞれのメリット・デメリット
記事内に広告を含みます。
将来の職業として臨床検査技師に興味がある高校生の中には、「臨床検査技師になるには、専門学校と大学、どちらに進むべき?」と悩んでいるかたもいると思います。
結論から言いますと、専門学校にも大学にもそれぞれメリットとデメリットがあります。何を重視するかによって変わってきますから、一概にどちらがいいとは言い切れません。
そこでこの記事では、臨床検査技師の専門学校と大学の違いと、それぞれのメリット、デメリット、どの場合にどちらを選ぶべきかについて解説します。
臨床検査技師学校の種類
臨床検査技師になるには、臨床検査技師の養成コースがある専門学校や医療技術短期大学、4年制大学で勉強し、国家試験に合格する必要があります(これ以外にも、薬学部などで所定の科目を履修すると臨床検査技師国家試験の受験資格を得られますが、ここでは割愛します)。
専門学校は3年制、大学は4年制です。また一般的な短期大学は2年制ですが、医療技術短期大学の場合は3年制になります。
以前は専門学校卒の臨床検査技師が大多数でした。しかし現在は臨床検査技師に限らず全体的に見た大卒者の増加や、大学の臨床検査技師養成コースの新設、医療技術短期大学の4年制大学への移行などにより、大卒の臨床検査技師が増加しています。
実際私のまわりでも大卒が増えたと思います。私の職場も私より上の世代は専門卒が多いですが、私の後輩は半数くらいが大卒です。
それでは専門学校と大学の違いについてご紹介します。
入学試験の難易度
専門学校も大学も、入学するには入学試験を受けて合格する必要があります。
入学試験の難易度は、一般的には専門学校より大学のほうが高いです。
特に国立大学では、共通テストで5教科7科目(国語、英語、数学ⅠA、数学ⅡB、理科2科目、社会1科目)を受験し、さらに大学ごとの個別試験も受けなければなりません。これだけの科目の受験勉強をするのは大変ですよね。
ただしひとくちに専門学校や大学といっても、偏差値にはかなりの幅があります。まずは気になる学校の偏差値や入学試験の内容を調べてみてくださいね。
カリキュラム
大学の場合、1〜3年生で講義や実習と病院実習を行い、4年生の1年間は卒業研究に充てられているところが多いです。4年生では卒業研究と並行して、国家試験の勉強や就職活動などを行います。
専門学校には卒業研究はありませんが、3年間で講義や実習、病院実習、国家試験対策、就職活動を行わなくてはなりません。
専門学校のほうが大学より1年短いため、スケジュールがみっちり詰まっていることが多いです。大学のほうが国家試験の勉強や就職活動に時間をかけられます。
ですが見方を変えれば、大学のほうが社会に出るのが1年遅くなるということでもあります。大学院まで行けばさらに遅くなります。
「すでに医療系ではない大学を卒業しているから、臨床検査技師の資格だけとりたい」という人なら、専門学校のほうがてっとり早いかもしれませんね。
同じ臨床検査技師として働くなら、1年早く社会に出て働くほうがいいのか、1年長く学生時代を楽しみたいのか、このへんはその人しだいでしょうか。
キャンパスライフ
大学ではサークル活動や部活が活発に行われています。他大学と交流しているサークルや部活もあります。
総合大学(文学部や法学部、工学部、医学部などさまざまな学部がある大学)であれば、医療系学部以外の学部の人たちとも、講義やサークル、部活などを通じて知り合う機会があります。
臨床検査技師を目指す学生は講義や実習が多いので忙しいですが、サークルや部活に参加している人も多いですよ。
また教養科目といって、自分の学部以外の分野の講義を受けることもできます(中には教養科目がない大学もあります)。特に総合大学では幅広い分野の教授がいるため、医療系以外のさまざまな学問も学べます。
専門学校は教養科目がありませんが、逆を言えば臨床検査技師の勉強に集中できるということでもありますね。
ほかにも大学は夏休みと冬休みが1か月以上と長いので、サークルや部活に打ち込んだりバイトをしたり旅行に行ったりと、さまざまなことにチャレンジできます。
専門学校も臨床検査技師だけでなく、看護師や診療放射線技師、臨床工学技士などの学科があり、サークルや部活が行われているところもありますが、大学に比べて規模が小さいところが多いです。
研究
大学では4年生になると、自分が興味のある分野を研究している教授の研究室に所属し、卒業研究を行います。文系の大学で言うところのゼミですね。
どのような研究を行うかはそれぞれの大学や研究室によるところが大きいですが、多くの学生にとって初めての本格的な論文執筆になります。
大学院へ進学すれば、そのまま研究を続けることもできます。新たに論文を書いたり、学会で発表したりといった経験も積めますよ。
一方で専門学校には卒業研究はありません。研究がやりたいなら、大学へ進学するのがいいですね。
学費
臨床検査技師になるための学校で、一番学費が高いのは私立大学です。一般的にも、私立大学の理系は文系や国立大学に比べて学費が高額になります。
授業料は年間で安いところでも80〜90万円程度、高いところでは150万円を超えるところもあります。入学金や教科書代などを含めると、卒業までにかかる学費は400〜800万円とかなりの金額になります。
専門学校の学費は3年間で200〜350万円程度です。私立大学と比べるとだいぶ下がりますね。
国立大学の場合、入学金と授業料については文部科学省が標準額を定めています。標準額は入学金が282,000円、授業料が年間535,800円です。国立大学は、入学金と授業料をこの標準額の上限20%以内にしなければならないという決まりがあります。
この標準額どおりの場合、4年間でおよそ250万円です。国立大学は理系でも文系でも学費に大きな差がありません。学費の面で言えば、4年間通って約250万円で済む国立大学が一番コスパがいいですね。
国家試験合格率
臨床検査技師になるには学校を卒業するだけでなく、国家試験に合格しなければなりません。合格率が高いかどうかは、学校を選ぶ上で気になるポイントですよね。
「臨床検査技師 国家試験 合格率 学校別」で検索すれば、学校ごとの合格率が出てきますよ。気になる学校の合格率を調べてみてくださいね。
私立大学や専門学校は、国家試験の合格率を重視しています。当然ですが合格率が低い学校より高い学校のほうが入学希望者が増えますからね。
そのため私立大学や専門学校は、合格率を上げるために国家試験対策が手厚いところが多いです。
国立大学や難関大学などは、国家試験の合格率を宣伝文句にしなくても入学希望者が集まります。また学生も研究職など、必ずしも臨床検査技師の資格が必要ない仕事に就くことも少なくありません。
そのためこうした学校は、国家試験対策にあまり力を入れていないところもあります。難関校であれば、学校側が手厚くサポートしなくても自力で合格できる学生が多いという理由もありますね。放任主義といいますか、「国家試験?各自でがんばってね~」という感じです。
こうした事情があるので、難関大学より専門学校のほうが合格率が高いなんてこともあります。
しかし、なるべく合格率を上げたい学校では「足切り」が行われていることも珍しくはありません。
足切りとは、一定の成績に満たない学生には国家試験を受けさせないということです。つまり「確実に合格できる学生だけ国家試験を受験させる」わけです。
たとえ合格率100%の学校に入学したからといって、自分も確実に合格できるわけではありません。要は入学後の努力が必要ということですね。
卒業後の選択肢
病院に就職する場合
最近は応募条件に書かれていなくても、大卒者を積極的に採用する病院があるようです。特に大学病院など、規模の大きなところにその傾向があります。
逆に大卒者や大学院卒者の採用を避ける病院もあります。大卒や院卒は専門卒よりお給料が高く設定されているところが多いため、同じ仕事をさせるならお給料が安いほうを採用したいという理由です。
また大学では教養科目や卒業研究など、臨床検査技師の業務以外のことも学びますが、専門学校では臨床検査技師としての知識と技術を習得させ、国家試験に合格することに重きをおいている傾向にあります。
そのため専門卒と大卒では、専門卒のほうが即戦力になるとして、専門卒を採用する病院もあります。
ですが全体的にみれば、病院への就職活動においては専門卒だから、大卒だから、ということはあまり関係ないと思います。どちらを卒業しても、就職先がまったくみつからないということにはまずならないでしょう。
一般企業に就職する場合
臨床検査技師の資格を活かして、検査機器や医薬品メーカーで研究職や営業職に就く人もいます。そのほかに治験(新しい薬が承認される前に、実際に薬を使って効果や副反応を調べること)に携わる治験コーディネーターとして働く臨床検査技師もいます。
これらの一般企業へ就職する場合は、大卒が有利です。中には応募条件が大卒や大学院卒となっているところもあり、専門卒では採用試験が受けられないケースも少なくはありません。
また「臨床検査技師の資格は取ったが、別の職業に就きたくなった」、「結婚や出産などをきっかけに臨床検査技師を辞めたが再就職したい」など臨床検査技師とまったく関係ない職業に就くことにしたとしても、専門卒より大卒のほうが就職活動での選択肢が広がります。
進学する場合
大学でも卒業研究を行いますが、大学院ではより高度な研究を行うことができます。
大学院へ進学したい場合も、大卒が有利です。大学院もある大学なら、卒業研究のときに所属していた研究室で継続して研究を行うこともできます。
専門卒で大学院へ進学することも可能ではありますが、その場合はまず大学を卒業しなければなりません。
大学をイチから受験しなおす、大学に編入(3年生など途中の学年から大学に入学すること)する、放送大学など通信制の大学で大卒の資格をとる、などの方法がありますが、どれも簡単な道とは言えません。やはり大卒からそのまま院へ進学するほうがスムーズです。
給料
これは臨床検査技師に限った話ではありませんが、専門卒より大卒のほうがお給料は高いケースがほとんどです。
同じ病院に就職して、同じ仕事をしていたとしても、大卒のほうが専門卒よりお給料が高いのです。とはいえ病院の場合、何倍も違うというほど差はありません。月に2〜3万円程度です。
また専門卒より大卒のほうが出世が早いことが多く、そのぶんお給料が上がっていくペースも大卒のほうが早いです。
ほかにも臨床検査技師として病院で働くより、検査機器や医薬品メーカー、治験コーディネーターで働くほうがお給料は高いです。そうした企業への就職は大卒が有利なので、やはり大卒のほうが平均してお給料は高くなります。
まとめ
大学に向いている人
- 入学試験の受験勉強が大変でも大丈夫
- サークル活動などキャンパスライフを楽しみたい
- 研究をやりたい
- (私立大学の場合)学費が高額でも用意できる
- (国立大学の場合)経済的に私立は難しい
- 大学病院など規模が大きい病院に就職したい
- 製薬会社など一般企業で働きたい
- 出世したい
- 大学院へ進学したい
- お給料は高いほうがいい
専門学校に向いている人
- 入りやすい学校に行きたい
- 経済的に私立大学は難しい
- 国家試験対策を手厚くしてほしい
- なるべく早く就職して働き始めたい
- すでに大学を卒業しているので、臨床検査技師の資格だけとりたい
専門学校と大学、どちらがいいかは、その人の学力や経済状況、希望する卒業後の進路などによって違ってきます。どちらが自分に向いているのか、よく考えて選んでくださいね。