臨床検査技師とは?仕事内容や年収、将来性、やりがいを現役技師が解説
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みなさんは、「病院で働く仕事」、「医療従事者」と聞いて、どんな職業を思い浮かべますか?
医師や看護師はほとんどの人が思い浮かべたのではないでしょうか。ちょっと前には、診療放射線技師や薬剤師が主役のドラマもありましたよね。
では、「臨床検査技師」を思い浮かべた人はどれくらいいるでしょう?
私は臨床検査技師なのですが、この職業、とにかく知名度が低い!そこでみなさんに臨床検査技師について知っていただくために、仕事内容などをご紹介します。
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臨床検査技師とは?
臨床検査技師をざっくり言うと、「病気を見つけたり、治療したりするためのいろいろな検査を行う仕事」です。
たとえば「おなかが痛い」と言って病院に運び込まれてきた患者さんがいるとします。治療のためには、この患者さんはどんな病気で、どれくらい重症なのかを知る必要があります。
そこで登場するのが臨床検査技師です。
虫垂炎やがんならエコー検査や病理検査でみつけることができます。食中毒なら便から原因となる菌を検出することもできます。血液検査をすれば、体の中でどのくらい炎症が起きているかもわかります。
痛みの原因が食中毒とわかれば細菌に効く薬を使えますし、虫垂炎やがんなら手術などの治療方法を検討します。治療後の血液検査で、どのくらい治療の効果があったか確認もできます。
このように、患者さんの病気をみつけて、治療に役立てるための検査を行うのが臨床検査技師です。
臨床検査技師の仕事内容は?
臨床検査技師が行う検査には、大きく分けて「検体検査」と「生理検査」の2つがあります。
検体検査
検体検査の「検体」とは、患者さんから提供された検査の材料のことです。具体的には血液や尿、便、痰、ほかには手術で摘出された臓器の一部などですね。そうした検体を分析するのが検体検査です。
検体検査には主に以下のものがあります。
血液検査
赤血球や白血球、血小板などの数や形、血液の濃さや血の固まりやすさを調べます。
生化学検査
血液に含まれる糖質や脂質、タンパク質、酵素、電解質などを測定し、臓器の状態を知るのに役立てます。
免疫検査
抗原や抗体の量を測定することで、肝炎ウイルスや梅毒、関節リウマチなどの病気を調べます。
一般検査
尿に血液やタンパク質が出ていないか、便に血が混じっていないかなどを測定します。
輸血検査
輸血が必要な患者さんの血液型や、患者さんの血液と血液製剤が適合するかどうかを調べます。
細菌検査
細菌の感染が疑われる患者さんの痰や尿、便などから細菌を検出し、病気の原因がどんな細菌かを調べます。
病理検査
手術で摘出してきた患者さんの臓器の一部などから病理標本を作成し、がん細胞などがないか顕微鏡で調べます。
生理検査
生理検査の「生理」とは、呼吸したり、心臓が動いたり、食べ物を消化したりといった、ひとが生きるためのからだのはたらきのことです。これを調べるのが生理検査です。患者さんに直接検査機器を装着して検査します。
生理検査には以下のものがあります。
心電図検査
心臓が動くときの電気の流れを波形にしたものが心電図です。不整脈の種類や心臓の病気があるかどうかがわかります。
超音波(エコー)検査
超音波が出る機器を体にあて、体の中を画像に映し出します。心臓の動きが悪くないか、臓器にがんなどの病気がないかなどを調べます。
肺機能検査
患者さんの呼吸の能力や、肺に病気がないか、気道が狭くなっていないかなどを調べます。
聴力検査
難聴があるかどうか、ある場合は難聴の程度や種類を調べます。
脳波検査
脳が活動するときに流れる電気信号を記録し、てんかんや意識障害、脳梗塞や脳腫瘍などの脳の病気を調べます。
神経伝導検査
手や足の神経に電気刺激を与え、筋肉が反応するまでの時間を測定することで、神経に障害がないかを調べます。
臨床検査技師の詳しい仕事内容は、こちらの記事もご覧ください。

ちなみによく「レントゲン撮る人?」と言われますが、それは診療放射線技師です。臨床検査技師は放射線を使う検査はできません。レントゲンやCTは診療放射線技師の仕事です。
臨床検査技師になるには?
臨床検査技師の養成校で学ぶ
臨床検査技師になるには、高校を卒業後に臨床検査技師の養成コースがある専門学校や医療技術短期大学で3年間、または大学で4年間勉強する必要があります。
解剖学や生理学、病理学といった医学の基礎から、臨床化学、臨床微生物学、臨床血液学、病理組織検査学などの検査に関する学問まで、幅広く学びます。
講義を受けるだけでなく、血液や尿を使って検査をしたり、心電図やエコーをやってみたりといった実習も行います。
ひととおり講義や実習が終わると、病院実習があります。実際に病院に行って、患者さんの検査が行われている様子を見学したり、現役の臨床検査技師の技術や知識を教えてもらったりする場です。
大学では4年生で卒業研究もやります。大学の教授は各自の研究室を持っているので、自分が興味のある分野の研究室に所属し、研究を行います。
大学生活については、こちらの記事もご覧ください。
国家試験を受ける
養成コースがある学校を卒業しただけでは、臨床検査技師になれません。臨床検査技師は国家資格なので、国家試験に合格する必要があります。
試験は毎年2月に行われます。マークシート方式で200問、60%以上正解すれば合格です。
ここ数年の国家試験の合格率は70〜80%くらい。学校でちゃんと勉強してきていれば、難関というほどのものではないと思います。

私はちゃんと勉強してこなかったので地獄を見ました…。
スキルアップ
臨床検査技師の仕事は、国家試験の内容がすべてではありません。医療の世界は日進月歩。常に新しい知識や技術を学び続けていく必要があります。
勉強会や学会に参加して最新の知識を学んだり、超音波検査士や細胞検査士、認定輸血検査技師など、より専門的な資格を取得したりしている人もいます。
臨床検査技師はどんなところで活躍しているの?
病院・クリニック
臨床検査技師の就職先として最もメジャーなのが、病院やクリニックです。
ここで働く臨床検査技師の仕事は、先ほど紹介した患者さんのからだの状態を知るためのさまざまな検査です。
病院の規模や診療科によって、働いている臨床検査技師の人数や、実施している検査項目、検査件数などはさまざまです。
検査技師が報告した検査結果をもとに、医師は患者さんの病気を診断したり、治療方針を考えたり、治療の効果が出ているか判断したりしています。
検査会社(検査センター)
臨床検査技師がいない小さなクリニックの検査や、大きい病院でも検査件数が少ないためコストがかかるなどの理由で病院内で行えないような検査は、検査会社に外注されます。
ここで検査を行っているのも臨床検査技師です。医療機関から預かった検体を検査し、検査結果を医療機関へ報告します。
健診センター
血液検査や心電図、エコー検査など、健康診断で行う検査を担当します。
病院では患者さんになんらかの症状や病気があるために検査を行いますが、健診センターでは特に症状がない人が検査の対象となります。そのため病気の早期発見に重要な役割を果たします。
保健所
管轄する地域で起きた食中毒の原因菌などを調べたり、スーパーなどで販売されている食品の添加物などを検査したりしています。
地域で感染症が発生すれば、その検査も行います。コロナ禍でPCRが一躍有名になりましたよね。
一般企業
製薬会社や検査機器メーカーなどで、研究開発や営業を担当している臨床検査技師もいます。
そのほかに治験(新しい薬が承認される前に、実際に薬を使って効果や副反応を調べること)に携わる治験コーディネーターとして働く臨床検査技師もいます。
臨床検査技師の将来性は?
かつてはほぼすべての検査が手作業で行われていたため、臨床検査技師の経験や技術、人手が必要とされていました。
ところが検査機器が進歩した今では、検査機器のボタンを押すだけでたいていのものは検査できます。そのため臨床検査技師の経験や技術がなくても、短時間で大量の検査が行えるようになりました。
臨床検査技師が今までしていた仕事が、機械やAIに取って代わられるのは避けられないのかなと思います。
ですが検査機器だけで完全に検査結果が出せるかと言えば、まだそこまでには至っていないというのが現状です。
機器が出した検査結果が本当に信頼できるものなのか、知識と経験を持った臨床検査技師による判断が必要です。またエコー検査や病理検査は、生化学検査などと比べて機械化が難しいと言われています。
将来性がある、とは正直言いがたいですが、これからはただ機器のボタンを押すだけではない、AIを使いこなせる臨床検査技師になる必要がありますね。
臨床検査技師の年収はどれくらい?
厚生労働省の「令和2年度 賃金構造基本統計調査」によれば、臨床検査技師の平均年収は496.5万円となっています。
臨床検査技師に限った話ではありませんが、基本的に年齢が上がるほど、職場の規模が大きくなるほどお給料は上がる傾向にあります。
また病院よりも検査機器メーカーや治験コーディネーターなど一般企業のほうが、専門学校や医療短大卒よりも四大卒や大学院卒のほうが、お給料は高いことが多いです。
ほかにも夜勤がある病院や検査会社では、基本給のほかに夜勤をしたぶんだけ手当がプラスされます。
仕事のやりがいは?
私が病院で働いていてやりがいを感じるのは、やはり「自分がした検査が患者さんの治療につながったとき」だと思います。
私は過去に、検査室まで普通に歩いてきた患者さんの心電図を検査したら心筋梗塞だったので、急いで医師に報告したことがあります。その患者さんは緊急入院になりましたが、治療が行われて無事退院しました。
自分が出した検査結果で患者さんのその後の治療が良い方向へ行ったときは、やりがいを感じますね。
一方でもし自分の力不足で病気を見逃していたらと思うと、責任の大きさも感じます。
おわりに
臨床検査技師の仕事についてお話しました。
臨床検査技師は患者さんの前に出てくることが少ないです。縁の下の力持ちと言えば聞こえはいいですが、知名度の低さに悲しくなることもあります…。
この記事を読んで、みなさんが少しでも臨床検査技師のことを知ってくれたら嬉しいです!